日本化学療法学会雑誌
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外科領域におけるcefluprenamの基礎的・臨床的検討
高橋 孝行森 俊雄石引 久弥栗原 直人相川 直樹田熊 清継篠澤 洋太郎佐々木 淳一堀 進吾
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1995 年 43 巻 Supplement4 号 p. 152-159

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抄録

腹腔内感染症に対する化学療法の理論付けを目的として, 成人の胃癌胃切除症例3例にcefluprenam 1日1g2回点滴静注し, 術後の腹腔内滲出液中濃度を術後3日間にわたり測定した。術後1, 2, 3日の3例を平均した濃度はそれぞれ8.0, 11.1, 11.1μg/mlでその推移は平坦型パターンを示した。3例3日間の平均濃度は10.1μg/ml, 1日基準投与量を1gとし, 当該抗菌薬の1日投与量 (g) との比を平均濃度に乗じた相対平均濃度は5.1μg/mlであり, 高値群に属した。この平均濃度と各種細菌群に対するcefluprenamのMIC80値との比, 臨床的感受性指数はEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilisに対し100以上, Staphylococcus aureus, Enterobacter cloacaeには10以上の値を示し, これらによる腹腔内感染症に対する本薬の臨床効果が期待されるが, Enterococcus faecalis, Pseudomonas aeruginosa, Bacteroides fragilisに対しては1.0前後の指数値であり臨床効果をえにくいものと考えられた。
さらに, 総胆管結石のため胆嚢摘出, 総胆管T-tubeドレナージを施行した患者1例の術後に本薬1gを点滴静注し投与後1, 2, 4, 6, 8時間の総胆管胆汁及び血清中本薬濃度を測定した。それぞれの時間での胆汁中濃度は0.3, 0.3, 1.9, 4.0, 4.7μg/mlで時間の経過とともに漸増し, 8時間値は血中濃度を上回った。
臨床的検討は胆管炎2例, 汎発性腹膜炎2例, 限局性腹膜炎5例, 術後創感染3例, 熱傷創感染, 腸腰筋膿瘍, 腹壁膿瘍, 肛門周囲膿瘍各1例の16例を対象とした。臨床効果は16例中著効2例, 有効12例, やや有効1例, 無効1例で, 有効以上の有効率は14/16 (87.5%) であった。細菌学的効果は12菌種18株中消失17株, 存続1株で消失率は17/18 (94.4%) であった。安全性については1例にトランスアミナーゼの上昇を認めたが, 自他覚的副作用症状・所見は認められなかった。

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