日本化学療法学会雑誌
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Cefluprenamの体内動態と外科感染症における臨床効果
内山 和久谷村 弘小林 康人青木 洋三岡 統三中村 昌文福永 裕充山本 真二大西 博信森 一成三島 秀雄
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キーワード: 胆汁中移行, 外科感染症
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1995 年 43 巻 Supplement4 号 p. 185-192

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抄録

Cefluprenam (CFLP) は, グラム陽性菌からグラム陰性菌にかけてきわめて幅広い抗菌スペクトルと強力な抗菌活性を示す新しい注射用セファロスポリン系抗生物質である。われわれは本剤の体内動態と外科感染症における臨床効果を28例で検討した。
1) 開腹術施行中の6例にCFLP 1gを30分間点滴静注した結果, 投与終了後から7時間までの組織内移行は胆嚢組織5.9~31.3μg/g, 腹壁皮膚1.6~11.5μg/g, 皮下脂肪2.5~4.9μg/g, 腹壁腹膜2.4~20.5μg/g, 大網4.0μg/g, 肝臓3.6~5.2μg/g, 胃10.5μg/gであった。胆嚢管閉塞のない2例の胆嚢胆汁では14.2~46.8μg/mlであった。
2) T-tubeまたはPTCD施行の各1例の胆汁中濃度は, それぞれ2時間, 2.5時間で最高4.5μg/ml, 12.1μg/mlを示した。
3) 胃癌術後の腹部ドレーン挿入例においてCFLP 1gを1日2回, 30分間点滴静注を3日間行った結果, 投与開始後1~6時間の腹水中移行は, 1日目18.4~25.1μg/ml, 2日目4.9~19.7μg/ml, 3日目1.1~16.9μg/mlであった。
4) 胆道感染症8例, 腹膜炎6例, 腹腔内膿瘍1例, 創感染2例, 肛門周囲膿瘍2例, 敗血症疑い1例の計20例に, CFLP 0.5~1gを1日2回, 4~10日間 (平均6.2日) 投与した際の臨床効果は, 著効8例, 有効10例, 無効1例, 判定不能1例で, 有効率94.7%(18/19)であった。また, 自他覚的副作用は認めず, 好酸球増多を1例に, GOT, GPTの上昇を1例に, GOT, GPT, γ-GTPの上昇を1例に認めた。
以上より, 外科感染症においてCFLPは有用性の高い薬剤であるといえる。

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