日本化学療法学会雑誌
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外科領域感染症に対するbalofloxacinの基礎的・臨床的検討
澤田 康夫樟本 賢首橋本 伊久雄
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1995 年 43 巻 Supplement5 号 p. 336-340

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抄録

新規経口キノロン薬であるbalofloxacin (BLFX) について, 外科領域感染症での体内動態と臨床的検討を行った。
体内動態の検討は, 胆石症5例, 総胆管結石症2例および急性壊疽性虫垂炎1例, 急性虫垂炎に由来した汎発性腹膜炎2例を対象とした。術前にBLFX 200mgを単回経口投与し, 術中に体液・組織を採取した。胆嚢胆汁濃度の対血漿中濃度比は0.15~33.4, 総胆管胆汁濃度のそれは11.71~31.11, 胆嚢壁内濃度のそれは0.93~2.10であり, 胆汁への移行が良好なことが示された。また, 腹腔内滲出液中濃度は0.86, 2.73μg/ml, 虫垂組織内濃度の対血漿中濃度比は1.32~1.96であった。
臨床的検討では感染性粉瘤7例, 皮下膿瘍1例, 乳腺炎1例, 手術創の二次感染1例の10症例に対して本薬を使用した。その結果, 著効6例, 有効4例で有効率100%であった。副作用はいずれの症例でも認められなかった。臨床検査値の異常変動では, GPTの軽度上昇を示した例が1例にみられたが, その他の検査値で異常値を示した例は認められなかった。

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