1996 年 44 巻 10 号 p. 798-803
ニューキノロン薬による低血糖症状の報告が, 欧米はじめ本邦で散見されている。我々は, 非糖尿病性慢性腎不全患者5例を対象にenoxacin 1回200mg1日3回, 3~5日使用し, 使用前後に75g経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT) を施行して, 血糖値, 血中インスリン, C-ペプチド.グルカゴン.成長ホルモンおよびコルチゾール値の推移を検討した。これら症例のOGTT空腹時血糖値はenoxacin使用により有意の変動を認めなかったが, インスリン平均値はenoxacin使用により6.4μU/mlから9.6μU/mlへと上昇傾向を認め, OGTT 30分のインスリン値はenoxacin負荷により低下傾向を示した。これらの成績はenoxacinによるインスリン分泌亢進とともに, インスリンの末梢組織あるいは肝での感受性亢進の可能性を示唆するものである。