日本化学療法学会雑誌
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Tosufloxacinと他のニューキノロン薬の新鮮臨床分離株に対する抗菌力の比較検討
11か月にわたる精度管理下での測定結果
松崎 薫内野 卯津樹村岡 宏江戸田 陽代金山 明子雑賀 威佐藤 弓枝手塚 孝一長谷川 美幸小林 寅哲山口 惠三
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1996 年 44 巻 7 号 p. 483-492

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抄録

1995年2月以後に全国の医療施設において分離された比較的新しい臨床分離株28菌種合計1,112株について各種ニューキノロン薬の抗菌活性を測定した。その結果, グラム陽性球菌においてMethicillin susceptible Staphylococcus aureus (MSSA) には耐性株をまったく認めず, MIC90は1.56μg/ml以下であった。しかしMRSAの多くはいずれのニューキノロン薬にも耐性を示し, Staphylococcus epidermtdis, Enterococcusの約10~20%に耐性を認めた。連鎖球菌のStreptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniaeに対してはnorfloxacin (NFLX), fleroxacin (FLRX) にややMICの高い株が存在したが他は良好な抗菌力を示した。なかでもtosufloxacin (TFLX), sparfloxacin (SPFX) はこれらの株に強い抗菌活性を有していた。グラム陰性桿菌においては, Serratia marcescens, Providenciaにやや耐性株を認めたが。その他Escherichia coli, Klebstella pneumoniae, Enterobacter,. Proteus等に優れた抗菌活性を示した。また, Pseudomonas aeruginosaの約10%に耐性株を認めたが, ブドウ糖非発酵菌群に対しても強い抗菌力を示し, 特にTFLX, ciprofloxacin (CPFX), SPFXの抗菌活性は優れていた。嫌気性菌に対してもBacteroides fragilisの一部を除きTFLXを筆頭に強い活性を認めた。以上のことからTFLXは発売から5年を経過した今でも最近分離された好気性菌から嫌気性菌に至るまで広い抗菌スペクトラムを有し, 耐性化しにくいことが示唆された。

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