日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
NM441に関する基礎的研究ならびに各種感染症に対する臨床的検討
福田 美穂掛屋 弘澤井 豊光宮本 潤子朝野 和典古賀 宏延河野 茂原 耕平餅田 親子伊折 文秋賀来 満夫高谷 洋下口 和矩福島 喜代康奥野 一裕
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 44 巻 Supplement1 号 p. 335-341

詳細
抄録

経口ニューキノロン系抗菌薬NM441について, 基礎的ならびに臨床的検討を行い, 以下の結果を得た。
1) 抗菌活性: 臨床分離株16菌種503株に対する最小発育阻止濃度を測定し, 他4薬剤 [norfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX), lomefloxacin (LFLX)] と比較検討した。その結果, NM441 の活性本体である NM394 は, グラム陽性菌に対しては他の4薬剤よりも優れた抗菌活性を有し, グラム陰性菌に対しても他の薬剤と同等の優れた抗菌活性を認めた。
2) 体液内濃度: びまん性汎細気管支炎患者1例と気管支拡張症患者2例に, 本剤200mgあるいは300mgを投与した時の血中および喀痰中濃度を測定した。NM394の最高血中濃度は2時間後にみられ, 0.9~1.3μg/mlであった。また, 最高喀痰中濃度は3-5時間後に0.3~0.5μg/mlを示し, 本剤の速やかな喀痰内移行性が示唆された。しかし, 本剤とS・M散を併用した症例では吸収阻害がみられ, 低い血中および喀痰中濃度を示した。
3) 臨床的検討: 呼吸器感染症患者17例および尿路感染症患者3例に対して本剤を投与し, 臨床効果および作用について検討した。総合判定では20例中「著効」6例, 「有効」10例, 「無効」2例, 「判定不能」2例で, 有効率89%の良好な成績が得られた。副作用は全例で認められなかった。臨床検査値異常としてはGOT, GPT上昇が1例に認められたが, いずれも軽度であり, 本剤の安全性が示唆された。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top