日本化学療法学会雑誌
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複雑性尿路感染症に対するNM441の臨床的検討
特に2週間投与の有用性と休薬後の再発について
宮崎 茂典荒川 創一守殿 貞夫片岡 頒雄山下 真寿男大部 亨竹田 雅羽間 稔
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1996 年 44 巻 Supplement1 号 p. 420-428

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抄録

新規ニューキノロン系合成抗菌薬NM441の複雑性尿路感染症に対する有用性を2週間の長期投与例を中心に検討した。対象は尿路に基礎疾患を有する複雑性尿路感染症患者のうち, 20歳以上80歳未満のカテーテル非留置症例40例である。このうち14例 (複雑性膀胱炎12例, 複雑性腎孟腎炎2例) に対しては本剤5~7日間投与を, 残り26例 (複雑性膀胱炎24例, 複雑性腎孟腎炎2例) に対しては14日間連続の長期投与を行い, 投与量は1回100または200mgとし, 1日2回食後経口投与を原則とした。
臨床効果判定は主治医判定およびUTI薬効評価基準 (第3版3以下UTI基準) に準じて行った。特に14日間投与例においてはUTI基準に準じた判定を投与後7日目と14日目, 主治医による判定を投与後14日目に行った。さらに投与終了時の14日目に細菌尿に対する効果が「陰性化」と判定された症例のうち, 休薬後に所定の検査が実施された症例を対象に, 休薬後1~6週目に再発判定を行った。
5~7日間投与例のうちUTI基準に合致した9例の総合臨床効果は「著効」7例, 「有効」2例で, 全例「有効」以上であった。細菌学的効果は15株中14株が消失し, 菌消失率は93.3%であった。
14日間投与例で7日目, 14日目ともにUTI基準に準拠した評価が可能であった17例の総合臨床効果は, 7日目, 14日目ともに76.5%(13例/17例) であった。細菌学的効果 (菌消失率) は7日目, 14日目ともに84.0%(21株/25株) の消失率であった。投与後の菌出現率は7日目41.2%(7例/17例), 14日目35.3%(6例/17例) であった。
休薬後の再発検討は9症例を対象に実施し, 休薬1~2週目は8例中1例に, 休薬3~6週目は5例中2例に再発を認めた。
副作用は1例 (2.5%) に口角炎が認められただけであった。臨床検査値の異常変動は投与前・(中)・後で臨床検査を実施し得た37例において1例も認められなかった。

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