日本化学療法学会雑誌
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細菌性肺炎に対するciprofloxacin注射薬の臨床評価
Ceftazidimeを対照薬とした第III相臨床比較試験
原 耕平他
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1997 年 45 巻 11 号 p. 901-922

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抄録

中等症もしくは重症の細菌性肺炎に対するニューキノロン系抗菌薬ciprofloxacin (CPFX) 注射薬の有効性, 安全性および有用性を検討するため, セフェム系抗菌薬ceftazidime (CAZ) を対照薬として比較試験を実施した。CPFXは1回300mgを1日2回, CAZは1回2gを1日2回, 原則として14日間点滴静注し, 以下の成績を得た。
1. CPFX群101例, CAZ群100例, 合計201例の患者に投与された。有効性解析対象例はCPFX群91例, CAZ群75例, 概括安全度解析対象例はCPFX群98例, CAZ群87例, 有用性解析対象例はCPFX群95例, CAZ群80例であった。
2. 臨床効果における有効率はCPFX群85.7%(78/91), CAZ群84.0%(63/75) で, 両群問に有意差は認められなかった。許容差Δ を10%とした同等性の検定では, 臨床効果に関する同等性が示された。なお, 背景因子の中で感染症重症度において偏りが認められたが, これを調整した場合においても, 結果は変わらなかった。
3. 細菌学的効果における菌陰性化率はCPFX群78.9%(30/38), CAZ群100%(28/28) で, 両群間に有意差が認められた (Fisherの検定: p<0.05)。
4. 副作用はCPFX群で11.1%(11/99) に, CAZ群で13.8%(12/87) に認められた。主な症状はCPFX群では過敏症状および注射部位の局所症状, CAZ群では過敏症状であった。
5. 臨床検査値異常はCPFX群で22.3%(21/94), CAZ群で29.4%(25/85) に認められた。主な所見は好酸球増多およびトランスアミナーゼの上昇であった。
6. 概括安全度判定で安全と評価された症例の割合はCPFX群で70.4%(69/98), CAZ群で63.2%(55/87) であり, 両群間に有意差は認められなかった。
7. 有用性判定で有用と評価された症例の割合はCPFX群で76.8%(73/95), CAZ群で77.2%(61/80) であり, 両群問に有意差は認められなかった。
以上の成績から, 本注射薬の300mg×2回/日投与は, 細菌性肺炎の治療において高い臨床的有用性が期待される薬剤であることが確かめられた。

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