日本化学療法学会雑誌
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一次性穿孔性腹膜炎原因菌の薬剤感受性パターン
出口 浩一鈴木 由美子石原 理加石井 由紀子中澤 ありさ
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1997 年 45 巻 11 号 p. 955-964

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抄録

1996年に検出した一次性穿孔性腹膜炎患者由来株の薬剤感受性パターンを検討して, 以下の結果を得た。
1. Escherichia coliの多剤耐性株にはextend-spectrum β-lactamase (ESBL) 産生もしくはそれらに類似のβ-ラクタマーゼ産生を示唆する株が存在した。すなわち, 供試50株の薬剤感受性パターンは14に分類されたが, cefotiam (CTM) に耐性を示した6株はampicillin (ABPC), cefazolin (CEZ) にも耐性を示し, さらにそのうちの3株はcefmetazole (CMZ) にも耐性であった。
2. peptostreptococcus spp.のpiperacillin (PIPC), およびCEPs耐性株が2割程度に認められた。
3. Bacteroides fragilis groupのCMZ耐性が高い割合であり, β-lactamase low producers, β-lactamase high producersに対するPIPC, CEZ, CTM, CMZのMIC90は共に高い値であった。そして, B.fragilis groupの上記薬剤耐性は, β-ラクタマーゼによることが強く示唆された。
4. Prevotella spp.のβ-ラクタマーゼ産生株の割合は高く, β-ラクタマーゼ産生株の薬剤感受性パターンはB.fragilis groupと類似していた。
5. CEPs耐性E.coliにはsulbactam/cefoperazone (SBT/CPZ) が, CEPs耐性Peptostreptocoecus spp.にはABPCおよびSBTIABPCが, B.fragilis groupとPreuotella spp.のβ-ラクタマーゼ産生株にはSBT/ABPCとSBTICPZが共に強い抗菌活性を示した。
6. B.fragilis groupとPrevotella spp. は複数菌感染の原因菌としての役割と, そこで産生されているβ-ラクタマーゼが間接的にCEPsなどの抗菌活性に影響する役割, すなわちdirect and indirect pathogenicityとしての役割を有している。

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