日本化学療法学会雑誌
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慢性下気道感染症に対するprulifloxacinとofloxacinの二重盲検比較試験
小林 宏行他
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1997 年 45 巻 5 号 p. 294-317

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抄録

新規キノロン系合成抗菌薬prulifloxacin (PUFX, NM441) の慢性下気道感染症に対する有効性, 安全性および有用性を客観的に評価する目的で, ofloxacin (OFLX) を対照薬として二重盲検群間比較試験を実施した。PUFXは1回300mg1日2回, OFLXは1回200mg1日3回, いずれも14日間連日経口投与を原則とした。得られた成績は以下のとおりであった。
1) 検討対象症例数は211例でPUFX群106例, OFLX群105例であった。有効性の解析対象症例は, PUFX群, OFLX群とも88例であった。投与前の略痰性状および胸痛に偏りがみられたが, 統計解析の結果, いずれも統計学的には交絡因子ではないと判断された。
2) 臨床効果は, PUFX群94.3%(83/88), OFLX群96.6%(85/88) の有効率であり, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。同等性検定 (△=10%) の結果, 両薬剤群の有効率は同等であることが確認された。
3) 細菌学的効果は, PUFX群77.5%(31/40), OFILX群82.5%(33/40) の菌陰性化率であり, 両薬剤群問に有意差はみられなかった。
4) 副作用発現率はPUFX群1.1%(1/94), OFLX群52%(5/97) で, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。主な症状は消化器症状であり, OFLX群での嘔気2例が中等度であったほかは, すべて軽度であった。
5) 臨床検査値異常変動の発現率はPUFX群7.9%(7/89), OFLX群7.5%(7/93) で, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。主なものはトランスアミナーゼの上昇であった。
6) 概括安全度で「安全である」と評価された症例の割合はPUFX群91.5%(86/94), OFLX群88.7%(86/97) で, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。
7) 有用性 (「有用」以上) は, PUEX群94.3%(83/88), OFLX群94.4%(84/89) であり, 両薬剤群間に有意差はみられなかった。
以上の成績より, 慢性下気道感染症に対してPUFX1回300mg1日2回投与はOFLX1回200mg1日3回投与と同等の有効率を示し, 副作用および臨床検査値異常変動の発現率にも有意差はみられなかった。また, PUEX群で発現した副作用は軽度の下痢1例のみであり, 安全性も高く, 慢性下気道感染症に対して臨床的に高い有用性が期待される薬剤と考えられた。

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