日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
尿由来緑膿菌におけるgyrA遺伝子変異の臨床的意義に関する研究
河田 幸道出口 隆仲野 正博安田 満
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 45 巻 9 号 p. 750-756

詳細
抄録

尿由来Pseudomonas aeruginosaのofloxacin (OFLX) 感受性の年次変遷を検討するとともに, 臨床経過の明確な症例から分離されたP. aeruginosaについてgyrA遺伝子変異の有無を検討し, 変異の頻度, 変異とMICとの関係, 変異と臨床効果との関係を検討することにより, 尿由来ニューキノロン耐性P. aeruginosaにおけるgyrA遺伝子変異の臨床意義について検討した。OFLXのMIC 25μg/ml以上を耐性と考えると, 耐性株の頻度は1988~1993年までは年々増加し, 1992~1993年分離株では58.6%まで達したが, 1994~1995年分離株では36.6%に低下していた。gyrA遺伝子変異は投薬前分離株では47株中27株 (57.4%), 投薬後分離株では30株全株に認められた。また, OFLXのMICとの関係では, MICが12.5μg/ml以下の株では21株中1株 (4.8%) のみであったが, MICが25μg/ml以上の32株では全株に変異が認められ, MICが200μg/ml以上になると重複変異株が出現した。ニューキノロン薬を5~7日間投与して治療を行った47例中, 変異を認めない20株では18株 (90.0%) までが消失したが, 変異を認めた27株では3株 (11.1%) の消失にとどまり, この間に有意差が認められた (p<0.01)。複雑性尿路感染症から分離されたP. aeruginosaに対するOFLXの細菌学的ならびに臨床的なMICのブレイクポイントは12.5μg/mlにあり, gyrA遺伝子変異の発現もこの濃度と一致していることから, 尿由来P. aeruginosaのキノロン耐性機序としてはgyrA遺伝子変異が臨床的に重要と考えられた。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top