1998 年 46 巻 12 号 p. 484-490
われわれは当院の血液由来黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) 130株の生物学的性状を調べ, そこから検出されたmethicillin resistant S. aureus (MRSA) についてvancomycin (VCM) とimipenem (IPM), meropenem (MEPM) による併用効果について検討を行った。また, アミノ配糖体系薬arbekacin (ABK) とIPMにつていも併用を検討した。MRSA102株 (78.5%) のコアグラーゼ型別はII型が95株 (93.1%) ともっとも多く, 次いでVII型が3株 (2.9%) であり, MSSA28株は, III型7株 (25%), VII型7株 (25%), II型6株 (21.4%), IV型4株 (14.3%) で型別不能が2株, IとV型が1株ずつであった。MRSAの40%がSEC型でありコアグラーゼII型-SEC型-TSST-1毒素陽性株が増加傾向にあった。VCMとIPMの併用では, 56%の株に対し優れた相乗効果を示し, 相加効果は43%であった。VCMとMEPMの併用では, 30%の株に対し相乗効果を示したもののVCMとIPMの併用より劣る結果であった。IPMとABKの併用では, 相乗効果や拮抗は認められず, 33%の株に対し相加効果を示した。以上の結果より, MRSAの多くが複数菌の1つとして分離されることを考えると, VCMとIPM, MEPMの併用はMRSAに対して有用と考えた。また, ABKとIPMの併用は, MRSAに対して併用効果を期待するのではなくMRSAと緑膿菌などのグラム陰性桿菌との複数菌感染の原因菌に対しての点にその意義が認められると考えられた。