日本化学療法学会雑誌
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慢性下気道感染症におけるerythromycin長期治療に関する臨床的研究
澤木 政好三笠 桂一古西 満前田 光一成田 亘啓
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1998 年 46 巻 7 号 p. 239-247

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抄録

難治性慢性下気道感染症に対する有用な治療法を確立するためにerythromycin (EM) 長期治療の臨床的検討を行った。対象はびまん性汎細気管支炎13例。全例多量の膿性痰と労作時呼吸困難, PaO2の低下を伴い, TTA検出菌はHaemophilus influenzaePseudomonas aeruginosaであった。EMの投与量は600~1,200mg/日, 投与期間は12~41か月であった。臨床効果は著効1例, 有効10例, やや有効2例で緑膿菌感染例2例も有効であった。QOLは全例に改善した。しかし治療前PaCO2の上昇していた症例では臨床効果は低く, EM長期治療の早期の開始が望まれた。長期投与による副作用はなかった。EM長期治療中の急性増悪はウイルス性上気道炎を契機におこり, 主な急性増悪菌はH. influenzaeStreptococcus pneumoniaeであった。EM長期治療が無効症例にはclarithromycin長期投与が有効であった。EM長期治療の終了時期については。臨床症状 (特に膿性痰) が消失し, 胸部X線上びまん性粒状影が消失した時期にEM長期治療の終了を考慮してもよいと考えられる。以上から慢性下気道感染症に対するEM長期治療は有用な治療法である。

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