日本化学療法学会雑誌
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Topoisomerase I阻害剤, irinotecan臨床研究の現況と至適併用療法の開発
胃癌・大腸癌領域
西山 正彦
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1998 年 46 巻 8 号 p. 292-296

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抄録

消化器癌における塩酸イリノテカン (CPT-11) について現況を概説し, 至適投与, 併用について提言した。CPT-11は, 喜樹から抽出・単離されたカンプトテシンの水溶性誘導体で, 活性代謝物SN-38がDNAトポイソメラーゼ (Topo) I型と安定な複合体を形成しDNA合成を阻害するという特徴的な作用機序を有する。前臨床研究にて母化合物よりも低い毒性, 高い効果, 広い抗腫瘍スペクトルが確認され, 内外で臨床試験が行われた。胃癌, 大腸癌に対してはそれぞれ20~25%, 21~32%の奏効率が示され, ことに大腸癌ではきわめて有用な抗癌剤と評価されている。投与量規制因子である白血球 (好中球) 減少と激しい下痢により本邦では関連死亡例も認められたが, いずれも現在では管理可能な副作用ととらえられている。臨床研究は多剤併用へと進み, 胃癌におけるシスプラチン (CDDP) 併用で42%, 大腸癌における5-フルオロウラシル (5-FU) 併用で14から67%の高い奏効率が報告されている。しかしながらいまだ検討段階で, 至適投与 (併用) 法を求めて基礎, 臨床両面から研究が進められている。耐性機序の解析もその1つであるが, 標的であるTopo Iの量・活性, 膜糖蛋白などの既存の耐性因子は必ずしも効果 (耐性) 規定因子とはならないと考えられている。われわれは, あらたにCPT-11耐性が薬剤の生体内荷電と細胞の膜電位差によって規定され, CPT-11と同様に陽性荷電するドキソルビシンなどの薬剤を同時併用すると一部の腫瘍細胞では効果が相殺されることを明らかにした。一方で, CPT-11投与後にTopo IIの発現増加がみられることから, CPT-11先行Topo II阻害剤24~48時間後投与は高い抗腫瘍効果を示すことも明らかとなった。その効果はCDDP/CPT-11よりも高く, 今後こうした知見を臨床に還元していくことでさらなる展開が期待できると考えている。

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