日本化学療法学会雑誌
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入院加療を必要とした乳幼児急性中耳炎, 下気道炎の検討
1994~1997年, ペニシリン耐性肺炎球菌感染の増加
遠藤 廣子末武 光子入間田 美保子
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1999 年 47 巻 1 号 p. 30-34

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抄録

本邦におけるペニシリン耐性肺炎球菌感染症については, 1988年以来報告が相次いでいるが, 劇症型化膿性髄膜炎以外には臨床家の関心はまだ十分でない。近年われわれは入院治療を必要とする急性下気道炎 (pneumonia bronchitis, P/B), 急性中耳炎 (acute otitis media, AOM), さらには両疾患の合併例の増加を経験するようになった。そこで1994年1月より1997年12月までの4年間に当院小児科および耳鼻咽喉科に入院した0~5歳の上記疾患862人について臨床的および細菌学的に検討した。患者数は1994年150人 (P B 92, AOM14, P B+AOM 44), 1995年184人 (P B 103, AOM 26, PB+AOM 55), 1996年286人 (P B 151, AOM 49, P B+AOM 86) と増加し, 1997年は242人 (PB 143, AOM 25, P B+AOM 74) とやや減少した。年齢別では0歳児174人, 1歳児274人, 2歳児141人と, 3歳未満児が全体の68%を占めており, PBにAOMが合併していた症例は0歳児35%, 1歳児51%, 2歳児39%であった。しかも, AOM罹患児では鼓膜切開率が1994年60%より1996年83%と増加し, 経静脈性抗菌薬投与期間の延長がみられ, AOMの重症, 難治化を認めた。AOM起炎菌として分離された細菌117株の内訳は, Streptococcus pneumoniae70株 (60%), Haemophilus influenzae 16株, Moraxella catarrhalis9株, MRSA3株, その他19株であった. S. pneumoniae染中, ペニシリン耐性株は83%(5870) を占めており, ペニシリン中等度耐性肺炎球菌 (PISP) は1994年から年ごとに4, 6, 10, 10株と増加, ペニシリン高度耐性肺炎球菌 (PRSP) は1995年に出現し, 2, 20, 6株と1996年に急増した。乳幼児においては, 肺炎に合併する中耳炎の存在にも留意し, 耐性菌感染を考慮に入れて対応することが必要である。

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