日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
フルオロキノロン系抗菌薬gatifloxacinの耳鼻咽喉科領域感染症に対する臨床的検討
馬場 駿吉他
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 47 巻 10 号 p. 632-648

詳細
抄録

新規の経口用フルオロキノロン系抗菌薬であるgatifloxacin (GFLX, AM-1155) の耳鼻咽喉科領域感染症に対する基礎的, 臨床的検討を行った。
1. 中耳粘膜中GFLX濃度は100mg投与120~165分後においてND (定量限界以下) ~0.66μg/g, 200mg投与では140~510分後においてND~1.11μg/gであり, 対血清比は023~6.00 (組織・体液あるいは血清中濃度がNDであったものを除く, 以下同様) であった。副鼻腔粘膜中GFLX濃度は100mg投与120~170分後において, 1.06~1.91μg/g, 200mg投与では110~160分後において1.79~4.29μg/gであり, 対血清比は1.41~2.20であった。耳下腺組織中GFLX濃度は100mg投与150~350分後で0.34~2.52μg/gであり, 対血清比は1.82~7.00であった。
2. 耳鼻咽喉科領域感染症111例に対する臨床効果の有効率は, 中耳炎75.7%(28/37), 副鼻腔炎88.2%(15/17), 扁桃炎85.2%(23/27), 咽喉頭炎81.8%(9/11), 外耳炎86.7%(13/15) および化膿性唾液腺炎100%(4/4) であった。全体の臨床効果は, 著効39例, 有効53例, やや有効14例, 無効5例であり, その有効率は82.9%(92/111) であった。
3. 分離菌の消失率はグラム陽性菌87.0%(67/77), グラム陰性菌90.9%(30/33), 嫌気性菌100%(8/8), 分離菌全体では89.0%(105/118) であった。
4. 副作用は115例中5例 (4.3%), 臨床検査値異常は92例中4例 (4.3%) に認められたが, いずれも重篤なものではなかった。
以上の成績より, 本薬は良好な組織移行性を示し, 耳鼻咽喉科領域感染症に対して安全で, かつ高い臨床効果を期待しうる有用性の高い薬剤であることが示唆された。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top