日本化学療法学会雑誌
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歯科・口腔外科領域におけるgatifloxacinの組織移行と臨床的検討
佐々木 次郎坂本 春生椎木 一雄松井 義郎道 健一菅野 和幸大野 朝也山本 忠山根 伸夫出口 浩一
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1999 年 47 巻 12 号 p. 805-817

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抄録

フルオロキノロン系抗菌薬gatifloxacin (GFLX, AM-1155) について歯科・口腔外科領域への適応を基礎的, 臨床的に検討し以下の成績を得た。
1) 患者にGFLX100mgを内服させた後の骨組織濃度は, 上顎骨では投与後1.75~5.5時間で 0.35~0.80μg/g, 下顎骨では3.25~5時間で測定限界値以下~1.85μg/g, 上顎歯槽骨では2.75時間で0.37μg/g, 下顎歯槽骨では3時間で0.45μg/gであった。
2) 患者に100mgを内服させた後の手術創滲出液の濃度は, 投与後2.83~4.17時間において0.49~0.57μg/gであった。
3) 臨床効果は, 1日100または200mgを2回投与した結果, 担当医師判定の解析対象症例93例において有効率96.8%であった。評点比判定の解析対象症例91例において有効率93.4%であった。
4) 歯周組織炎, 歯冠周囲炎および顎炎の患者より313菌株が検出され, 細菌学的効果は100%の菌消失率であった。
5) 副作用は下痢, 発疹および口唇水疱が3例 (29%) に認められたが, いずれも重篤な症状ではなかった。臨床検査値異常としてはS-GPT, S-GOTおよび好酸球増多などが12例 (14.3%) に認められたが, 投薬終了で回復または回復傾向を示した。
以上の成績より, GFLXは歯科・口腔外科領域の感染症に対し1日100または200mg投与で優れた臨床効果を示し, 安全性にも特に問題も認められないことから, 本領域の感染症治療に有用な薬剤であると考えられた。

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