日本化学療法学会雑誌
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血液疾患患者に発症した深在性真菌症に対する経口抗真菌薬itraconazoleの臨床的有用性に関する検討
多施設共同試験
浦部 晶夫武藤 良知溝口 秀昭宮崎 保三浦 亮柴田 昭外山 圭助山口 英世高久 史麿
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1999 年 47 巻 2 号 p. 80-88

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抄録

血液疾患患者において深在性真菌症と診断された患者, またはその疑いのある患者に対する経口抗真菌薬itraconazole (ITCZ) の有効性, 安全性を検討するとともに, ITCZの血中動態と臨床効果との相関についても検討した。総症例数は94例であり, 安全性については全94例, 有効性については確診例31例, 疑診例39例の計70症例について解析を行った。有効率は66.2% (4568;「判定不能」の2例を除く) であり, 確診例で65.5% (1929例), 疑診例で66.7% (2639) であった。原因菌として真菌が分離されたのは28例 (40%) であり, うちCandida属が86%を占めた。主な亜属において有効と評価されたのは, Candida albicans 9例中8例, Candida glabrata 3例中2例, Candida krusei2例中2例であった。また他の抗真菌薬無効のために切り替えた症例は20例であり, うち18例がfluconazole (FLCZ) からの切り替えであり, 有効率は72.2% (1318) であった。安全性について評価した94例中, 本剤との因果関係が否定できない1例2件の副作用 (両下肢の浮腫, 顔面の浮腫各1件), 臨床検査値異常14例44件 (主なものとしてはGOT上昇10件, GPT上昇9件, LDH上昇7件, AL-P上昇5件など) がみられ, 安全と評価されたのは81.9% (7794) であった。以上より, 経口抗真菌薬ITCZは造血器悪性疾患患者に発症した深在性真菌症に高い治療効果を示し, かつ安全性に優れ, 有用性の高い薬剤であると考えられた.またC. albicans以外の真菌や他剤無効例に対しても有効性を示した.

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