日本化学療法学会雑誌
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(1→3)-β-D-グルカンと抗真菌薬のヒト多形核白血球の化学発光におよぼす影響
加藤 淳子
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1999 年 47 巻 3 号 p. 152-160

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抄録

(1→3)-β-D-グルカン (β-グルカン) のヒトに対する病原性を明らかにするために, 3種類の粒子状 (不溶性) β-グルカンと3種類の可溶性β-グルカンの免疫学的活性をヒト好中球からの活性酸素の放出能を指標にin vitroで比較検討した。活性酸素の産生は, 好中球浮遊液にルミノールを加えて, 粒子状β-グルカンであるzymosan, zymocel, curdlanや可溶性β-グルカンであるCM-curdlan, laminarin, sonifilanを刺激物としてchemiluminescence (CL) 法で測定した。この測定系は, 可溶性β-グルカンやlipopolysaccharide (LPS) の好中球の活性酸素産生に対するpriming効果を調べるのにも使用した。各種粒子状β-グルカンで好中球を刺激すると, 明らかな好中球CLが容量依存的に誘導されたが, 可溶性β-グルカンやLPSには好中球に作用して直接的に活性酸素を放出させる作用はみられなかった。LPSと可溶性β-グルカンの好中球CLに対するpriming効果を比較するために, 好中球をLPSや3種類の可溶性β-グルカンで37℃ で60分間前処理した後で, phorbol myristateacetate (PMA) で刺激して20分間のCLを測定した。好中球を100ng/ml以上の濃度のLPSで前処理した場合には, 好中球CLの増強がみられ, 少量の血清存在下では, わずか10分間前処理した後においても同様のpriming効果を認めた。一方, CM-curdlan, laminarin, sonifilanなどの可溶性β-グルカンを種々の濃度 (1ng~10μg/ml) で好中球と10分ないし60分間接触させた後にPMAで刺激した場合には, 好中球CL反応に対する有意なpriming効果を認めなかった。逆に, これらの可溶性β-グルカンの10μg/ml以上の濃度で好中球を37℃ で60分間接触させた後に, 粒子状β-グルカンであるcurdlanやzymocelで刺激すると, 好中球のCL活性が濃度依存的に抑制された。この抑制効果はCandida albicansを刺激物とした場合にも認められた。次に, ヒト好中球の活性酸素産生能におよぼす3種類の抗真菌薬, amphotericin B (AMPH-B), fluconazole (FLCZ), miconazole (MCZ) の影響について検討した。好中球を1μg/ml以上の濃度のAMPH-Bで60分間前処理した後には, 粒子状β-グルカンであるcurdlanの食作用に付随する好中球のCL反応が有意に増強し, FLCZの1μg/ml以上の濃度では有意な抑制がみられた。MCZの前処理は好中球のCL反応に影響を与えなかったこれらの知見は, β-グルカンや抗真菌薬がヒト好中球の酸素代謝を修飾することを示唆しているが, この免疫修飾作用のメカニズムの解析や臨床的意義を確立するためには, 今後さらなる検討が必要と思われる。

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