日本化学療法学会雑誌
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Pseudomonas aeruginosaの多剤耐性化に寄与する薬剤排出システム
後藤 直正
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1999 年 47 巻 6 号 p. 319-328

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抄録

緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) のキノロン耐性の研究は, その作用標的の変異や外膜透過経路の消失では説明できなかった耐性機構を明らかにした。その機構とは, 本菌染色体上にコードされ, 染色体上のnalB, nfxBおよびnfxC遺伝子座の変異により, 染色体上にコードされた3種類の薬剤排出システム (MexAB-OprM, MexCD-OprJ, MexEF-OprN) の高発現によるものである。このそれぞれのシステムは, 内膜蛋白質 (MexB, MexD, MexF) と外膜蛋白質 (OprM, OprJ, OprN), さらにそれらをリンクするペリプラスム蛋白質 (MexA, MexC, MexE) によって構成され, 細胞内に透過した抗菌薬を細胞外に能動的に排出することにより。抗菌薬の細胞内濃度を減少させる。さらに, 緑膿菌の種々の抗菌薬に対する自然耐性が, 野生株でもわずかに発現したMexAB-OprMに起因することがわかった。緑膿菌感染症の抗菌化学療法を円滑に進めるためにも本排出システムの機構のさらなる解明が望まれる。

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