日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
Pazufloxacin注射薬の臨床第I相試験
中島 光好梅村 和夫小菅 和仁植松 俊彦
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 47 巻 Supplement1 号 p. 141-175

詳細
抄録

健康成人男子のべ52名を対象に, pazufloxacin注射薬 (PZFX注射薬) の臨床第I相試験を行った. 単回投与 (30分間点滴静注) 試験は, 50mg投与より開始し, 100, 200, 400および500mg投与まで段階的増量により検討した。反復投与試験は, 1回300および500mgの1日2回と500mgの1日3回を5日間連続投与にて検討した。また, 点滴時間の影響およびプロベネシドとの併用についても検討し, 以下の成績を得た。
臨床検査値異常として500mgの単回・反復投与試験で軽度のNAG上昇が2例認められたが, これら以外に自覚症状, 他覚所見, 理学所見, 心電図および臨床検査値などに異常は認められなかった。
PZFX注射薬の50, 100, 200, 400および500mgの単回投与試験の血清中濃度は用量に依存し, Cmaxは点滴終了時の0.5時間後に得られ, 2-コンパートメントモデルによる解析によりそれぞれ1.28, 2.68, 4.61, 9.93および11.0μg/mlであり, T1/2は1.74~1.88時間であった. CmaxとAUCは用量間に比例した。尿中排泄率には用量による差はほとんどなく, 投与24時間までに89.5~93.9%排泄された。反復投与試験で, 血清中濃度推移は1日目よりプラトーに達し, 尿中排泄率からも蓄積性は認められなかった。
点滴時間の影響について, 500mg単回投与にて30と60分間を比較すると60分間点滴では最高前清中濃度は30分間点滴の約80%に低下した. 本薬は60分間点滴にて1回1,000mg投与まで忍容性が確認された. プロベネシドとの併用では, 血中半減期の延長および尿中排泄の遅延が認められ, 本薬の腎排泄機序として, 糸球体濾過および尿組管分泌の関与が示唆された。
以上の成績より, PZFX注射薬は今回の検討にて副作用は認められず, 薬物動態および各種細菌に対する抗菌力を考慮すると, 臨床評価を行うに値すると考えられた。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top