日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
Pazufloxacin注射薬の外科感染症における臨床効果および体液・組織移行性の検討
谷村 弘他
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 47 巻 Supplement1 号 p. 227-241

詳細
抄録

新しい注射用ニューキノロン系抗菌薬であるpazufloxacin (PZFX) について全国19施設において基礎的・臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。疾患別有効率は腹腔内感染症78.3% (18/23), 胆道感染症86.7% (13/15), 創二次感染73.7% (14/19), 術後肺炎86.7% (13/15), 敗血症2/2のほか, 蜂巣炎, 骨髄炎, 肛門周囲膿瘍に対してはいずれも著効で, 全体の有効率は81.8%であった。とくに, Pseudomonas aeruginosaを含む複数菌感染15例の臨床効果は80.0% (12/15) の有効率であった。副作用は全例に認めなかった。臨床検査値異常は12.5% (10/80) に認め, 主なものは肝機能検査値の上昇, 好酸球の増多および白血球数の減少であった。
PZFX 300mgまたは500mg静脈内投与1~6時間後の胆嚢摘出術予定患者における胆嚢組織内濃度, 胆嚢胆汁中濃度および胆管胆汁中濃度は, それぞれ0.54~13.6μg/g (n=10), <0.5~212μg/ml (n=10), 5.77~39.5μg/ml (n=3) で, その時の血清中濃度0.45~11.8μg/ml (n=10) と比較して良好な胆嚢組織内移行および胆汁中移行を認めた。PZFX静脈内投与後の胆道ドレナージ患者における胆汁中最高濃度は5.47~56.4μg/ml (n=9) で, その時の血清中濃度2.94~12.8μg/ml (n=7) と比較して約4倍の良好な胆汁中への移行を認めた。また, 胆汁中グルクロン酸抱合体濃度は未変化体とほぼ同レベルかそれ以下であった。PZFX静脈内投与後の腹水中最高濃度は1.87と2.40μg/ml (n=2) で, その時の血清中濃度は1.74と6.30μg/ml (n=2) であった。PZFX静脈内投与後の胸水中最高濃度は1.43μg/ml (n=1) で, その時の血清中濃度は0.34μg/ml (n=1) であった。PZFX静脈内投与後の喀痰中最高濃度は0.87~6.24μg/g (n=4) で, その時の血清中濃度は1.89~10.5μg/ml (n=4) であった。
以上より, PZFX注射薬は腹腔内感染症をはじめとする外科感染症に対して有用な薬剤のひとつであるといえる。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top