日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
キノロン薬開発の歴史と評価
熊澤 淨一
著者情報
キーワード: 日本化学療法学会
ジャーナル フリー

2000 年 48 巻 12 号 p. 883-891

詳細
抄録

日本化学療法学会は化学療法の発展を図り, 広くこの方面の研究の促進, 知識の交流および普及を目的とし1946年から歴史がはじまっている。本学会が関与してきた抗菌薬開発の流れとしてはナリジクス酸, ピペミド酸, ニューキノロンへと続く1つの大きな流れがあった。オールドキノロンとよばれる主としてグラム陰性菌に抗菌力を示すナリジクス酸が1962年に誕生し以降種々の同系薬が開発された。しかし抗菌スペクトラム, 尿中回収率, 代謝などが課題とされていた。これらを解決するものとしてフッ素とピペミド酸を合体したオールドキノロンとは異なる構造をもついわゆるニューキノロンとして1984年にノルフロキサシンが世界で最初に開発/承認された。抗菌スペクトラムがグラム陽性菌まで拡大し, グラム陰性菌に対して一段と強い抗菌力をもったことから適応が尿路感染症, 腸管感染症, 耳鼻科感染症に加え, 上気道感染症, 浅在性化膿性疾患まで拡大された。よりすぐれた同系薬の開発はオフロキサシンをはじめ多くの製品が開発されたが, そのすべてを本学会として臨床治験を行っている。しかし, 小児適応については現在もノルフロキサシンしか取得されていない。ニューキノロンは優れた抗菌薬であるが, 副作用について当初から指摘されていた関節障害は臨床例では認められなかったものの中枢神経作用, 光毒性など当初想定していなかったものが臨床試験開始後, 市販後に明らかになってきた。光毒性については幸いなことに改善を期待できる薬剤が開発されている。本学会はこのような新抗菌薬の評価を含め今後も化学療法に関する研究, 調査に力を注いでいくべきであり, 学会誌, 学術集会, 研究会そして関連学術団体との共同研究も実施し続けなくてはならない。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
次の記事
feedback
Top