日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
中心静脈カテーテル感染の治療方針に関する検討
花谷 勇治小平 進浅越 辰男宜保 淳一戸枝 弘之川上 小夜子
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 48 巻 2 号 p. 107-111

詳細
抄録

最近10年間に留置した中心静脈カテーテル (CVC) 2,202本を対象とし, CVC感染の重症度判定と治療方針について検討した。CVC留置中に38℃ 以上の発熱を認め, 他に明らかな感染源がなく, CVC先端培養が陽性の場合, あるいはCVC抜去により72時間以内に解熱した場合にCVC感染陽性と判定した。CVC感染で血圧低下 (収縮期血圧90mm Hg以下) および/あるいは合併症 (急性腎不全, 心不全, 呼吸不全, 眼内炎) を呈した症例を重症と判定した。CVC感染発生率は10.6%(233本) で, このうち15.5%(36本) が重症化した。性別, 年齢, 基礎疾患の良悪, 併存症の有無, CVC留置期間により重症化率に有意差を認めなかった。発熱からCVC抜去までの期間が72時間を超えると重症化率が25.9%と有意に高率となった (P<0.05)。最高体温が39℃以上で, 白血球数が10,000/mm3以上の場合には重症化率が36.7%と有意に高率であった (P<0.001)。CVC感染からの検出菌はグラム陽性球菌 (GPC) が42.0%, 真菌が39.5%, グラム陰性桿菌 (GNR) が16.6%であった。GPCとGNRの半数以上がいわゆる耐性菌であり, 適切な抗菌薬の選択にはCVC先端および血液の培養が必須と考えられた。検出菌の年次推移をみると, 真菌の有意の減少を認めた (P<0.01)。単独菌検出例での重症化率はGPC 2.6%, GNR 40.0%, 真菌26.5%で, GPCの重症化率は有意に低率であった (P<0.01)。CVC感染の重症化予防のため, CVC早期抜去の重要性が再確認された。体温が39℃ 以上で白血球数が10,000/mm3以上の症例は中等症と判定し, 重症に準じて取り扱う必要があると考えられた。軽症はCVC抜去のみで経過をみてよいが, 中等症と重症は CVC抜去とともに抗菌薬投与を開始すべきと考えられた。CVC感染の治療にはカルバペネムを第一選択とし, 血中β-D-グルカン定量が陽性の場合にはアゾールを併用する必要があると考えられた。症状の改善が得られない場合あるいは重症化する場合には, vancomycinを併用すべきと考えられた。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top