日本化学療法学会雑誌
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新GCP後の抗菌薬開発の現況と問題点
斎藤 篤
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2000 年 48 巻 5 号 p. 319-324

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抄録

医薬品の臨床試験 (治験) は, 有効性と安全性を最終的にヒトで確認する試験であり, 倫理性, 科学性, 信頼性が確保されていなければならない。わが国では1997年3月に新GCPが制定され, 翌年の4月からは完全実施に移行された。抗菌薬開発におよぼす新GCPの影響については完全実施後まだ日が浅く, 今後の動向を見届ける必要があるが, 現時点では製薬企業, 医療機関がともに新GCPに則した治験環境の整備や, その効率的な運用法の模索に終始しているのが現状である。今後医療機関側としては,(1) 治療環境の整備,(2) 責任医師の責務, 業務の増大,(3) 同意説明取得の困難性,(4) 資料閲覧への理解と協力,(5) 治験コーディネーター・制度の確立,(6) チーム医療の重要性,(7) 一般市民への啓蒙,(8) 被験者への利益の提供などの諸問題を逐次解決しながら, 新GCPのもとで治験が適正かつ円滑に実施されるよう努めることが肝要である。わが国の治験をとりまく環境はきわめて厳しく, 抗菌薬といえどもその例外ではない。このような氷河期から早く脱出するためにも, 日本化学療法学会には抗菌薬開発への意欲向上, 治験環境の整備に向けての積極的な支援, 指導をお願いしたい。

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