日本化学療法学会雑誌
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重症および難治性感染症に対するpazunoxacin注射薬の臨床的検討
島田 馨中井 祐之庄司 聡新妻 一直稲松 孝思小山 優入交 昭一郎松岡 康夫小井戸 則彦小田切 繋樹綿貫 祐司西山 晴美沖本 二郎狩野 孝之坂本 翔
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2000 年 48 巻 8 号 p. 673-683

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抄録

新規な注射用ニューキノロン系抗菌薬であるpazunoxacin (PZFX) 注射薬 (以下PZFX注射薬と略す) の, 重症および難治性細菌感染症の敗血症, 感染性心内膜炎および膿胸に対する有効性, 安全性および有用性を検討する目的で, 一般臨床試験を実施した。用法・用量は1回500mg (PZFXとして) の1日2-3回点滴静注とし, 投与期間は原則14日間とした。総投与症例数は9例で, 臨床効果解析対象症例は7例, 副作用解析対象症例は8例, 臨床検査値異常解析対象症例は8例, 概括安全度解析対象症例は8例, 有用性解析対象症例は7例であった。臨床効果における有効率は, 敗血症が2/2, 膿胸が3/5であった。前投与抗菌薬無効例に対する有効率は2/2であった。起炎菌は, 敗血症では2例より分離され, Escherichia eoliの単独菌感染が1例, E. coliEnterococsus faecalisの複数菌感染が1例であった。細菌学的効果は, 単独菌感染例は消失, 複数菌感染例は投与後の菌検査が未実施のため不明で, 消失率は1/1であった。膿胸では, 起炎菌は1例より分離され, Streptococcus intermdiusの単独菌感染であった。細菌学的効果は不変で, 消失率は0/1であった。副作用は1例に発現し, 発現率は1/8であった。症状はせん妄であった。臨床検査値異常は2例に発現し, 発現率は2/8であった。内訳は, 好酸球増多1例, A1-P上昇1例であった。概括安全度における安全率は5/8であった。有用性における有用率は, 敗血症が1/2, 膿胸が3/5であった。以上の成績より, PZFX注射薬は, 重症および難治性細菌感染症のなかでも敗血症と膿胸に対し臨床効果が期待できる薬剤と考えられる。

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