日本化学療法学会雑誌
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真菌血症の新しい菌量迅速測定PCR法と菌種同定nested PCR法の開発
稲田 佳紀角田 卓也谷村 弘
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キーワード: PCR法, Candida属
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2001 年 49 巻 1 号 p. 18-29

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抄録

Candida属に代表される真菌感染症は外科周術期における重要な課題の1つであるが, 検体の直接培養や血清学的補助診断は所要時間や精度の点で十分ではなく, 従来の真菌特異的PCR診断法も定性に過ぎず, 抗真菌薬治療の要否を決定するcut off値の設定と治療効果判定には定量化が必要である。また, 抗真菌薬の感受性が菌種によって異なるため, 薬剤の選択や投与量の決定に菌種の同定が求められる。本研究では, 真菌血症におけるPCRを用いた定量分析法の確立を目標とし, Candida albicans-secreted aspartic proteinase遺伝子を標的に蛍光プローブを設計して, real time quantitative PCRによるC. albicansの菌量迅速測定法を開発した結果, C.albicans含有血液から予測値にきわめて近似したPCR定量値を得られた。手技は簡便であり, 再現性にも優れていた。また, PCRによる菌種同定法の確立を目標とし, 外科臨床上重要な真菌5種C. albicans, Candida tropicalis, Candida parapsilosis, Candida glabrata, Candida kruseiの18S-rRNAのV4 regionを標的に迅速同定するnested PCR法を開発した結果, 真菌含有血液から5菌種の正確な同定が可能であることが立証できた。いずれも, 臨床応用が可能であったことから, 抗真菌薬治療の要否の決定から, 治療効果と菌交代の有無の判定, 抗真菌薬の増減量や変更の判断までを迅速にできる方法として期待される。

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