日本化学療法学会雑誌
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抗微生物薬治験での被験者募集のための新しい試みその2
テレビ, 新聞による広告
小野 真兼子 勇松島 敏春二木 芳人
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キーワード: 被験者募集, テレビ, 新聞, 広告
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2001 年 49 巻 4 号 p. 265-269

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抄録

今回われわれは, telithromycinの市中肺炎を対象とした治験における被験者確保の手段として, 本邦で初めてテレビおよび新聞を組み合わせての被験者募集を行ったので報告する。被験者募集は岡山, 香川地区で2000年4月17日から4月26日の10日間実施した。被験者募集のための情報提供は, テレビでは3局で土日を除く毎日計223回放映した。また, 新聞では2紙で同期間中4図 (計8回) 掲載した。この地区での視聴者または読者への情報到達度を試算したところ, 1) テレビにより, エリア内の88.7%の人が平均5.8回の情報提供スポットを見た, 2) 新聞では, 岡山県の53.1%, 香川県の42.5%の人がこの情報提供を見たものと想定された。今回の問い合わせ総数は151件であり, うち医療機関を紹介できた数は29件であったが, 実際に肺炎の診断を受けた方はいなかった。紹介に至らなかった残りの122件の主な内訳は, 肺炎の症状なしが21件, 除外基準に抵触していたものが8件, 適当な医療機関なしが13件, 受診のための時間がないが8件であった。一方, 同地域の被験者組み入れ推移を被験者募集のための情報提供の実施前後で比較すると被験者募集の準備, 実行に移るにつれて治験全体の患者組み入れ数に対する同地域の寄与率が急速に高まり, テレビ・新聞による被験者募集が治験責任医師に対して高い波及効果をもたらしたと推察される。今回のテレビおよび新聞を組み合わせた被験者募集において, エリア内のほとんどの方に, 治験の情報が何らかの方法により到達したものと考えられ, 治験の啓蒙および被験者確保の手段のひとつとして有効な方法であると考えられた。

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