日本化学療法学会雑誌
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Cefditoren pivoxilの市販後の特別調査とその調査精度に関する検証
紺野 昌俊生方 公子千葉 菜穂子長谷川 恵子柴崎 有美須藤 梢岸部 和也藤川 弘之酒井 正史小山 義之横田 正幸真山 武志
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2001 年 49 巻 6 号 p. 369-396

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抄録

Cefditoren pivoxil (CDTR-PI, 販売名: メイアクト®錠100, メイアクト®小児用細粒) の使用実態下におけるペニシリン耐性肺炎球菌 (PRSP) ならびにβ-lactamase非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌 (BLNAR) の病態に関する特別調査の精度の検証と, CDTR-PI投与前後における両細菌の消長や各種抗菌薬に対する感受性分布ならびに主治医の判定による「臨床的手応え」について検証した。あわせて, 上咽頭から検出される肺炎球菌とインフルエンザ菌の意義についても検討した。その結果, 本調査において分離された肺炎球菌とインフルエンザ菌は, 主として1歳未満から2~3歳前後の乳幼児の上咽頭に生息し, 急性気道感染症や急性中耳炎と関連していることが明らかにされた。CDTR-PIの投与により, これらの細菌はPRSPやBLNARにおいても, 早期には上咽頭より消失あるいは減少するが, 血中濃度のtroughを介して, 外界より容易に侵入・定着・増殖を繰り返すと考えられる現象が見られた。これらの症例のうち何例かが遷延あるいは反復する上気道感染症や中耳炎に繋がっていくものと思われた。その意味では, 諸家が指摘している乳児院・保育園などに在園する乳幼児, あるいはその兄弟がhigh riskにあることが示唆された。CDTR-PI投与前後に検出された肺炎球菌とインフルエンザ菌の各種抗菌薬に対する感受性を測定した。そのMIC分布を比較すると, 各種β-ラクタム薬はそれぞれの薬剤が有する各種細菌のPBPsに対する親和性の強弱にしたがって, 微妙に耐性の側にシフトする現象が見られた。上咽頭の細菌検査は, 小児の急性気道感染症や続発する急性中耳炎の起炎菌決定のために必要である。ことにPRSPやBLNARによる遷延・反復する感染症を考慮すれば, いかなる耐性菌かということを早急に知ることが, 適正な抗菌薬選択のためにも必要である。その意味では, 今回実施したPCR法による薬剤耐性遺伝子の検索は非常に有用な情報を提供した。加えて, 上咽頭の細菌叢が関与する感染症においては, 上咽頭の細菌の消長を少なくとも, 抗菌薬投与後2~3日目と10日前後にグラム染色による検鏡によりたしかめることが重要であることが示唆された。主治医による「臨床的手応え」は咽頭や扁桃あるいは鼓膜などの臨床所見と共に鼻汁あるいは中耳分泌物の性状が重視されていた。これらの所見と上咽頭の検鏡所見や検出菌量との関連を多変量解析により求めたが, 有意な関係にあることが示された。

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