日本化学療法学会雑誌
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Cefoselisの中枢神経系副作川発現に関する調査
リスク因子の同定および発現頻度の推定
柴田 義貞中山 和彦吉田 めぐみ瀧口 宗男塩貝 陽而黒澤 和平塩谷 茂松岡 浄堀田 久範樋口 貞夫
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2002 年 50 巻 10 号 p. 730-747

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抄録

注射用広域抗生物質cefoselis (CFSL, ウィンセブ (R)) の中枢神経系副作用発現に関与するリスク因子の究明および発現頻度の調査を目的として, 本剤発売から緊急安全性情報を配布した目までの約3か月間に本剤が納人された4, 120施設のうち, 調査協力の得られた1, 254施設における全投与例をレトロスペクティブに調査した。収集例数は10, 641で, 推定投与例数21, 119の約半数であった。結果は以下の通りである。
1.症例対照研究によるリスク因子の検討の結果, 透析・腎不全 (透析中であるか腎不全であること) の有無に対するMantel_Haenszel要約オッズ比は23.1 (95%信頼区間: 11.9-44.7) であり, 透析・腎不全は明らかなリスク因子であることが判明した。方, 透析・腎不全患者を除いて腎機能障害の有無をリスク因子とした場合は, Mantel-Haenszel要約オッズ比は1.5 (95%信頼区間: 0.5~5.1) で有意、ではなかった。
2.中枢神経系副作用発現頻度は10, 174例中93例 (0.91%) であったが, 使川禁忌の「透析・腎不全」の患者を除外すると, 9, 879例中48例 (0.49%) であった。ロジスティック回帰分析によって中枢神経系副作用発現におよぼす透析・腎不全以外のリスク因子の影響を検討した結果, 腎機能障害の程度, 年齢および1日投与量が主要なリスク因子として同定された。これらを説明変数とした推定発現頻度は, 65歳未満の患者に1回1gを1日2回投与する本剤の標準的な使用では, 1腎機能障害がなければ0.05~0.18%, 腎機能障害患者の場合, 軽度障害患者では0.09~0.31%, 中等度障害患者では0.16~0.56%, 高度障害患者では0.28~1.00%であった。また, 65歳以上の高齢患者の初期川量である1回0.5gを1日2回投与した場合は, 腎機能障害がなければ0.07~0.24%, 腎機能1障害患者の場合. 軽度障害患者では0.12~0.44%, 中等度障害患者では0.22~0.78%, 高度障害患者では0.40~1.38%であった。
3.今回の調査結果から, CFSL投与時の中枢神経系副作用発現頻度は腎機能障害の程度の高度化, 高年齢化, 投与量の増加に応じて上昇すると推測された。したがって, 腎機能の程度, 年齢を考慮してCFSLの投与量を調整する必要があると考えられた。

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