日本化学療法学会雑誌
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In vitroにおけるmicafunginの薬物相互作用
金子 勇人山戸 康弘橋本 知子石井 育子白神 歳文河村 章生寺川 雅人加賀山 彰
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2002 年 50 巻 Supplement1 号 p. 94-103

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抄録

Micafungin (MCFG) のヒト血清およびヒト肝ミクロゾームを用いたin vitroでの薬物相互作用について検討し, 以下の結果を得た.
1. 限外濾過法により求めたMCFGのヒト血清蛋白結合率は99.74%であり, ワルファリン, ジアゼパム, サリチル酸およびメトトレキサートの存在下でほとんど変化しなかった. また, ワルファリン, ジアゼパム, サリチル酸およびメトトレキサートのヒト血清蛋白結合率もMCFGの存在下で大きな変化を示さなかった.
2. MCFGを0.1-1mmol/L (130-1, 300μg/mL) の濃度範囲で評価した場合, 0.5mmol/L以上の濃度で明らかにビリルビンとの置換現象が認められ, ビリルビン結合部位における臨値は2.0×103L/molであった. 対照薬としたサリチル酸およびスルフィソキサゾールのKD値はそれぞれ5.0×103L/molと1.4×104L/molであり, MCFGに比べ高値であった.
3. ヒト肝ミクロゾームにおけるM5およびM13生成活性はいずれもクマリン7-水酸化活性およびテストステロン6β-水酸化活性と有意な相関があった. さらにM13生成活性はトルブタミドメチル水酸化活性およびS-メフェニトイン4'-水酸化活性と有意に相関した.
4.トラニルシプロミン (CYP 2 C 19阻害剤) およびketoconazole (KCZ, CYP 3 A 4阻害剤) は, ヒト肝ミクロゾーム中MCFG代謝活性に対して阻害作用を示した. シクロスポリンA, タクロリムスおよびKCZのMCFG代謝活性に対する50%阻害濃度 (IC50) は, それぞれ>100, >100および6.2μmol/Lであり, シクロスポリンAおよびタクロリムスの作用はKCZよりも明らかに弱かった.
5. テルフェナジンの代謝活性に対するMCFGおよびKCZのIC50 は67.7および0.46μmol/LでありfluconazoleのIC50は100μmol/L以上であった. 同様にアステミゾールの代謝活性に対するIC50はそれぞれ24.9, 0.12および44.2μmol/L, ニフェジピン代謝活性に対する阻害定数 (Ki) は17.3, 0.012および10.7μmol/Lであった.
6. シクロスポリンA代謝活性に対するMCFG, caspofungin acetateおよびKCZのIC50は, それぞれ31, 39および0.14μmol/Lであり, MCFGとcaspofungin acetateの阻害作用はほぼ同等であったが, その程度はKCZよりも明らかに弱かった.

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