日本化学療法学会雑誌
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尿路バイオフィルム感染症の課題と展望
門田 晃一公文 裕巳
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2003 年 51 巻 7 号 p. 426-430

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抄録

細菌バイオフィルムは抗菌薬や生体側からの感染防御系に対して抵抗性因子となることから, 尿路バイオフィルム感染症は難治性を示す。特に, バイオフィルム形成の場となった基礎疾患が存続する症例では, 除菌が困難であり, 尿路感染の持続を容認することになる。尿路バイオフィルム感染症は尿流動態が良好に保たれていれば発熱などの急性症状を呈することはまれであり, 適切な尿路管理が実施されれば, 宿主と尿路バイオフィルム感染症の共棲も可能である。しかし, 尿路バイオフィルム感染症の持続は, 感染宿主のみならず病院内全体に対し臨床的問題を引き起こす。具体的には, 尿流動態の悪化に伴い急性感染症に移行し宿主の状態を重篤化させる病態であること, その慢性期においては院内感染に深く関与し交差感染の主たる汚染源となることが挙げられる。尿路バイオフィルム感染症の持続が宿主とそれを取り巻く環境におよぼす影響を考えると, 除菌を目的とした治療方法の考案と積極的な予防策を講じる必要性はきわめて高いと考える。

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