日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
Telithromycinの抗菌力試験
各種菌株に対する抗菌力・諸因子の影響・形態変化
西野 武志大槻 雅子原田 秀明
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 51 巻 Supplement1 号 p. 19-31

詳細
抄録

Telithromycin (TEL) の標準菌株に対する抗菌スペクトル, 臨床分離株に対する抗菌力を既存のマクロライド薬であるclarithromycin (CAM), azithromycin (AZM), セフェム薬のcefdinir (CFDN), ニューキノロン薬のlevonoxacin (LVFX) と比較した。さらに, その抗菌力におよぼす諸因子の影響, TELの細菌増殖曲線におよぼす影響, およびTELによる細菌の形態変化を検討した。TELは既存のマクロライド薬と同様に, グラム陽性菌と一部の陰性菌 (Haemophilus influenzae, Hericobacter pylori) に対して幅広い抗菌スペクトルを有し, その抗菌力はグラム陽性菌群において, すべての対照薬剤と同等以上であり, グラム陰性菌群ではCAMおよびAZMと同等以上であった。臨床分離株 (1997年分離, 488株) に対しては, グラム陽性菌において優れた抗菌活性が認められ, 特にStreptococcus属およびEnterococcus属に対しては, 試験薬剤中, もっとも強い抗菌力を示し, さらにマクロライド耐性を示したこれらの菌に対しても, TELは有効であった。しかし, methicillin耐性Staphylococcas aureus (MRSA), ニューキノロン耐性S. aureus, methicillin耐性Stapylococcus epidermidis (MRSE) に対しては他の対照薬と同様に抗菌力は弱かった。グラム陰性菌においては, 既存のマクロライドが抗菌力を示すH. influemae, Moraxella catarryalis, H. Pyloriに対してAZM, CAMと同等以上であったが, その他の菌株に対しては, CFDNおよびLVFXに劣る抗菌力であった。TELの抗菌力におよぼす諸因子の影響は, S. areus, S. epidermidis, Enterococcus faecalisおよびEscyericyia coliの標準菌株を用いてerythromycin (EM) およびCAMと比較, 検討した。培地pHによる影響では, アルカリ性側で抗菌力の増強が, 酸性側で低下が認められ, 馬脱繊維血液 (DHB) の添加による影響では, 添加量の増加に伴い抗菌力が良好となり, また, 接種菌量については軽微な影響であり, いずれも対照薬と同等の変化であった。標準菌株の増殖曲線に及ぼすTELの影響を検討した結果, S.aureusに対しては比較的静菌的な作川であったが, S. pneumoniaeでは2MIC以上, H.influensaeでは1MIC以上の濃度から殺菌的に作川し, さらに, その作用は迅速で強力なものであった。TEL作用後の形態変化を微分干渉顕微鏡で観察したところ, S. aureusおよびS. pneumoniaeにおいては4MIC以上の濃度で菌体の膨化, 8MIC以上で溶菌像が観察された。さらに, 透過型電子顕微鏡像においては, S. aureusで細胞壁の著明な肥厚, 空洞化様構造および溶菌が認められた。H. influenzaeでは1MIC以上の濃度で伸長化が観察され, 4MIC以上の濃度で, 原形質分離および溶菌が観察された。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top