日本化学療法学会雑誌
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マクロライド系薬の新作用と創薬
砂塚 敏明
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2004 年 52 巻 7 号 p. 367-370

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抄録

エリスロマイシン (EM) を代表とするマクロライド系抗菌薬は, ブドウ球菌, 連鎖球菌, 肺炎球菌などのグラム場性菌, 淋菌, コレラ菌などの一部のグラム陰性菌およびマイコプラズマに対して抗菌活性を示し, 臨床的にきわめて毒性の低い抗菌薬として広く用いられている。
最近になって, 新たな作川として消化管運動機能尤進作用が注目され, 消化管ホルモンであるモチリンのアゴニストであることが明らかになった。
さらに, 第三の作用として, びまん性汎細気管支炎がEMの少量長期投与によって改善することが明らかになった。その作川は, 慢性気道炎症の場をとりまく免疫炎症細胞 (好中球, リンパ球, マクロファージ) 肥満細胞, 等) を介する抗炎症作用であることが明らかになった。
一方, EMの細菌への調節作用があることが明らかになった。本来抗菌活性を示さないとされている緑膿菌に対して, 低濃度のマクロライドとの接触により (1) 菌体毒素産生抑制作用,(2) エラスターゼ等の酵素産生抑制作川,(3) 細菌が産生するバイオフィルムの産生抑制作用,(4) バイオフィルム破壊作用,(5) 菌の細胞付着抑制作用, 等がある。このように, マクロライドには創薬に展開できるさまざまな新作用を有している。

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