日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
泌尿器科領域感染症に対するdoripenemの後期第II相試験
守殿 貞夫
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 216-229

詳細
抄録

カルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の泌尿器科領域感染症に対する有効性, 安全性および用法・用量 (一般臨床試験), ならびに前立腺組織への移行性 (体液・組織内濃度測定試験) を検討した。
1. 有効性
一般臨床試験における検討症例は, 急性単純性腎盂腎炎1例, 複雑性腎盂腎炎9例, 複雑性膀胱炎11例, 急性細菌性前立腺炎6例および細菌性精巣上体炎5例であった。DRPM250mg×2回/日, る臨床効果 (有効率) は, 84.4%(27/32例) であった。最も多く検討された250mg×2回/日投与における臨床効果 (有効率) は87.5%(21/24例) であった。また, UTI薬効評価基準 (第3版) における総合臨床効果 (有効率) は, 複雑性尿路感染症 (腎盂腎炎・膀胱炎) に対して100.0%(16/16例) であった。投与開始前の分離菌の消失率は, グラム陽性菌13株, グラム陰性菌21株, 合計34株に対し, 97.1%であった。
2. 薬物動態
体液・組織内濃度測定試験では前立腺切除術等の手術患者を対象に, DRPM 250mgまたは500mgを1回投与し, 投与開始60-160分後までの間に血液および前立腺組織を同時期に採取した。前立腺組織内濃度は, 250mg投与で0.76-2.23μg/g, 500mg投与で1.04-451μg/gであった。
3. 安全性
一般臨床試験では, 副作用 (症状) が40例中3例 (7.5%), 副作用 (臨床検査値) が39例中8例 (20.5%) 認められた。また, 体液・組織内濃度測定試験での副作用 (症状) は13例中すべてに認められず, 副作用 (臨床検査値) が12例中1例 (8.3%) 認められた。いずれの試験においても重篤なものは認められず, 臨床上問題となるものはなかった。
以上の結果より, DRPMは泌尿器科領域感染症に対して高い有効性と安全性を示し, また前立腺組織への薬物移行も良好で, 有用性の高い薬剤であると考えられた。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top