日本化学療法学会雑誌
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複雑性尿路感染症に対するdoripenemの用量検討
守殿 貞夫荒川 創一公文 裕巳松本 哲朗中島 光好片岡 陳正嶋田 甚五郎
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2005 年 53 巻 Supplement1 号 p. 230-243

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抄録

複雑性尿路感染症に対するカルバペネム系抗菌薬doripenem (DRPM) の臨床推奨量を検討するため, 1回250mg 1日2回投与 (250mg投与群) を推定臨床推奨量とし, 1回500mg 1日2回投与 (500mg投与群) との対比による用量検討試験を実施した。患者条件はUTI薬効評価基準 (第3版) に合致した投与前膿尿5WBCs/hpf以上, 投与前細菌尿104CFU/mL以上を有する同意取得時年齢が20議以上79歳以下の入院患者とした。ただし, 前立腺術後症例については術後6カ月以上経過した患者とし, カテーテル留置の患者は対象外とした。臨床推奨量の確認において, 250mg投与群の総合臨床効果 (有効率) は97.4%であり, 95%信頼区間は8a2-99.9%であった。この有効率は本治験で想定した有効率90%に対する95%信頼区間 (78.6-98.3%) の下限値を下回らず, 想定有効率を上回る成績であった。また, 500mg投与群との比較において, 主要評価項目である総合臨床効果 (有効率) は250mg投与群では97.4%(37/38例), 500mg投与群では96.9%(31/32例) であり, 2群間で有意差は認められなかった (p=near 1)。副次的評価項目の膿尿効果の正常化率 (250mg投与群: 60.5%, 500mg投与群: 750%), 細菌尿効果の陰性化率 (250mg投与群: 94.7%, 500mg投与群: 84.4%), 細菌学的効果の消失率 (250mg投与群: 95.7%, 500mg投与群: 97.7%), 治験担当医師の臨床効果の有効率 (250mg投与群: 94.7%, 500mg投与群: 84.4%) のいずれも2群間で有意差は認められなかった。れらの結果から, 250mg投与群は500mg投与群に比して遜色のない有効性をもつと考えられた。安全性については, 副作用 (症状) の発現率は250mg投与群で4.9%, 500mg投与群で2.9%, 副作用 (臨床検査値) の発現率は250mg投与群で15.4%, 500mg投与群で152%であり, いずれも2群間で有意差は認められなかった。
以上の結果より, 90%の想定有効率を上回った250mg投与群の有効率97.4%の成績とその推定精度ならびに500mg投与群との対比の結果を加味して, DRPMの1回250mg 1日2回投与は複雑性尿路感染症に対する臨床推奨量として妥当であると判断した。

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