日本化学療法学会雑誌
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婦人科悪性腫瘍
杉山 徹
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2006 年 54 巻 3 号 p. 239-248

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抄録

婦人科悪性腫瘍の標準的化学療法はプラチナ製剤, タキサン製剤をkey drugとして, トポイソメーラーゼI阻害薬, アントラサイクリンなどで構成されている。主な婦人科悪性膿瘍である卵巣癌, 子宮頸・体癌に対する2005年の標準的治療を簡潔に示すと, (1) 卵巣癌: 初回治療は手術療法で, 基本手術+surgical staging, さらに進行癌では腫瘍減量術が行われる。術後化学療法は, パクリタキセル (TXL) 175mg/m2/3h+カルボプラチン (CBDCA) AUC5~6 (TC療法) で, I期癌では3~6コース, 進行癌では6コース行う。毒性や組織型により, ドセタキセルやイリノテカン (CPT・11) を用いることもできる。再発時には, 再発までの期間が長い (>6カ月) 化学療法感受性腫瘍では初回レジメンと同じあるいは類似レジメンでの治療, 抵抗性腫瘍では初回治療薬と交叉耐性を有さない新規薬剤を用いた治療が行われる。(2) 子宮体癌: 初回手術後 (surgical staging) のハイリスク例 (低分化度, 深い筋層浸潤, リンパ節転移, 腹腔内細胞診陽性など) に対し, 欧米では放射線療法が標準的, わが国では化学療法を行う施設が多い。再発・進行癌や術後ハイリスク症例に対して, 標準的な薬剤は, シスブラチン (CDDP), ドキソルビシン (DXR), TXLであり, AP (CDDP/DXR) 療法が標準的レジメンである。最近, TAP (TXL/DXR/CDDP)+G-CSFやTC (TXL/CBDCA) での標準化の検討が進んでいる。(3) 子宮頸癌: 欧米ではIb2期癌以上で放射線化学療法 (chemoradiation) が標準的である。わが国では, Hb期までは手術療法が基本であり, bulky massを有するIb2~IIb期では術前化学療法+広汎子宮全摘術, III/IV期では欧米のエビデンスに基づきCDDPを用いたchemoradiationが広く導入されている。

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