日本化学療法学会雑誌
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慢性呼吸器疾患の二次感染患者におけるgarenoxacinの喀痰移行性試験
渡辺 彰新妻 一直武田 博明青木 信樹
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2007 年 55 巻 Supplement1 号 p. 162-168

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抄録

新規経口デスフルオロキノロン系抗菌薬であるgarenoxacin mesilate hydrate (GRNX) の慢性呼吸器疾患の二次感染患者に対する喀痰中の濃度推移と移行性について検討し, あわせて有効性および安全性についても確認した。
慢性呼吸器疾患の二次感染患者5例 (びまん性汎細気管支炎1例, 陳旧性肺結核2例, 気管支拡張症2例) を対象にGRNX400mgを1日1回経口投与し, 血漿中および喀痰中薬物濃度を測定した。その結果, 喀痰中および血漿中濃度は投与3~5時間後に最高値を示し, 投与3時間後の喀痰中濃度 (平均±標準偏差) は3.50±1.17μg/gであった。また, 投与24時間後の喀痰中濃度は0.784±0199μg/gであったことから, 喀痰中トラフ濃度においてもGRNX濃度は呼吸器感染症の主要起炎菌に対するMIC90 (キノロン系抗菌薬感受性Staphylococcus aumreus: 0.025μg/mL, Streptococcus pneumoniae: 0.05μg/mL. Hamopkilus influenzae: 0.0l25μg/mL, Moraxella catarrhalis: 0.10μg/mL) を上回っており, 呼吸器感染症に効果が期待できると推察された。本試験の症例においては, 起炎菌 (Streptococcus constellatus, Pseudomoms aeruginosaおよびH. influenzae) が消失した有効3例はいずれも投与24時間後の喀痰中濃度が各起炎菌のMICを上回っていた。一方, 安全性に関しては, 重篤または重要な有害事象は認められなかった。
以上, GRNXは慢性呼吸器疾患の二次感染患者の喀痰中への移行が良好で, 効果が期待できる喀痰中濃度が得られたことから, 有用な薬剤になるものと期待される。

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