日本化学療法学会雑誌
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中等症の市中肺炎患者に対するlevofloxacin600mg/日投与の有用性
桑原 正雄土井 正男池松 秀之沖本 二郎
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2008 年 56 巻 1 号 p. 21-32

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抄録

今回, われわれは, 使用実態下において, 中等症の市中肺炎を対象として, levofloxacin (LVFX) の国内承認最大用量である600mg分3/日投与例および初期治療における短期間 (3日以内) の注射薬使用例を集積することにより, 本治療法の臨床効果と安全性を検討した。
その結果, 臨床効果解析対象症例における有効率は90.3%(84/93例) であった。各治療法の内訳は, LVFX単独治療群59.1%(55例), 併用治療群30.1%(28例), スイッチ治療群10.8%(10例) であり, それらの有効率はおのおの90.9%, 89.3%, 90.0%であった。
原因菌は51.6%(33/64例) 検出され, 主な原因菌は, Streptococcus pneumoniae20.3%, Haemophilus influenzae17.2%, Moraxella catarrhalis4.7%であった。治療法別の細菌学的効果はLVFX単独治療群100%(13/13例), 併用治療群91.7%(11/12例), スイッチ治療群100%(1/1例) であった。非定型病原体は, Legionella pneumophilaは検出されず, Mycoplasma pneumonine, Chlamydia pneumoniaeは抗体価検査でおのおの6.8%(3/44例), 16.7%(6/36例) 検出された。また, M.pneumoniae, C.pneumoniae検出例9例における臨床効果は全例有効であった。
副作用は120例中12例 (10.0%) に発現したが, うち9例が軽微であり, 全例LVFXの投与継続が可能であった。3例に中等度の副作用が発現したが.LVFX投与終了後速やかに回復していた。本調査の対象症例の半数以上が高齢者であったがLVFX600mg分3/日投与に関して特に注意すべき安全性上の問題点は認められなかった。
以上より, LVFX600mg分3/日単独投与, および初期治療における短期間 (3日以内) の注射薬の使用により, 中等症の市中肺炎に対して高い有用性が期待できることが示され, 早期からの外来治療を可能にし, 医療経済的にも効果的な治療法になりうると考えられた。

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