日本化学療法学会雑誌
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慢性閉塞性肺疾患症例の急性増悪に対するニューキノロン系抗菌薬とβ-ラクタム系抗菌薬の有用性
東山 康仁渡辺 彰青木 信樹二木 芳人河野 茂
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2008 年 56 巻 1 号 p. 33-48

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抄録

NICE Studyの結果, 本邦におけるCOPDの患者数は約530万人であり, 欧米と同様に罹患率が高いことが明らかになったが, その多くは潜在患者であり, 実際にCOPDと診断されている患者数は20万人程度である。
今回, われわれは, 使用実態下において, すでにCOPDと診断されている患者のうち, 外来治療が可能な急性増悪患者を対象に, 本邦のガイドラインで推奨されている経口ニューキノロン系抗菌薬 (levofloxacin: LVFX) と経口β-ラクタム系抗菌薬の有用性を比較検討した。
臨床効果解析例249例の有効率はLVFX投与群で81.2%(155/191), β-ラクタム系抗菌薬投与群483%(28/58) であり, 両群間に有意差が認められた。各臨床症状の改善率を比較した結果, LVFX投与群の喀痰量, 喀痰色調, 咳徽の改善率はβ-ラクタム系抗菌薬投与群に比べ有意に高く, QOL改善効果においても, LVFX投与群は有意に高い改善効果を示した。また, 急性増悪の症状が改善しないため再受診した患者の割合は, LVFX投与群10.5%(20/191), β-ラクタム系抗菌薬投与群22.4%(13/58) であり, LVFX投与群の再診率は有意に低かった。
原因菌は40.0%(32/80) で検出され, 主な原因菌はStreptococcus pneumoniae (8.8%), Haemophilus influenzle (10.0%), Moraxella catarrhalis (15.0%) であった。Mycoplasma pneumoniae, Chlamydia pneumoniaeの陽性率はおのおの1.1%(1/95), 0%(0/95), インフルエンザウイルス, アデノウイルス, RSウイルスの陽性率はおのおの9.0%(8/89), 1.2%(1/83), 1.2%(1/83) であった。
副作用発現率はLVFX投与群で2.4%(7/296), β-ラクタム系抗菌薬投与群4.5%(4/88) であり, 各投与群とも重篤な副作用は認められなかった。また, 約半数が75歳以上の後期高齢者であったが, 各投与群とも高齢者で副作用発現率が高くなる傾向は認めらなかった。
以上より, 本調査は使用実態下で行ったため, 無作為比較試験ではないものの, 本調査で対象としたCOPDの急性増悪患者に対しては, 強い抗菌力と良好な喀痰内移行性を有するLVFXを優先して選択すべきと考えられた。

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