日本化学療法学会雑誌
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MRSA感染症患者に対するarbekacin200mg1日1回投与の治療効果
臨床薬理試験
相川 直樹河野 茂賀来 満夫渡辺 彰山口 惠三谷川原 祐介
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2008 年 56 巻 3 号 p. 299-312

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抄録

methicillin-resistant Sfaphylococcus amus (MRSA) 感染症患者に対するarbekacin (ABK) の200mg1日1回投与法の有効性, 安全性, 血中ABK濃度との関係 (PK/PD) を検討するため, 多施設共同一般臨床試験を実施した。ABK投与19例のうち14例を有効性解析対象とした。14例はすべて肺炎症例であった。また, 全19例を安全性解析対象とした。MRSA肺炎に対する臨床効果 (有効率) は71.4%, 細菌学的効果 (消失・減少率) は46.2%と良好な成績であり, 200mg1日1回投与法はMRSA肺炎に対して有効であることを確認した。薬物動態パラメータに関しては, Cmaxおよびトラフ値の平均値はそれぞれ16.2μg/mL, 1.1μg/mLであり, 中等度以上の腎機能低下により半減期は延長した。PK/PD解析の結果, Cmax/MICが7~8を上回る場合には期待する臨床効果が得られるものと推察されたが症例数が少なくターゲット値を明確にすることは困難であった。安全性に関しては, 副作用発現率は自他覚所見で158%, 臨床検査値異常変動では36.8%であり, 未知の副作用は認められなかった。重篤な有害事象としてショックが1例に認められたが, ABKとの因果関係は否定された。安全性上の目安とされている血中濃度と副作用発現との関連は, Cmaxが12μg/mL以上の患者では12μg/mL未満の患者と比べて副作用発現頻度が高まることはなく, トラフ濃度2μg/mLと副作用発現頻度との関係も同様であった。以上, ABKの200mg 1日1回投与法によって高いCmaxが得られ.優れた有効性が認められた。また, 多くの患者でトラフ濃度は2μg/mL未満に低くコントロールされ, 副作用発現頻度が高まることはなかった。これらの結果より, ABK 200mg 1日1回投与法の有用性を確認できた。

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