2003 年 74 巻 4 号 p. 483-490
緑茶飲料製造残渣サイレージの給与が泌乳牛の採食量,飼料消化率,ルーメン発酵,血液性状および乳生産に及ぼす影響について検討した.緑茶飲料製造残渣サイレージを飼料乾物中に10%含む飼料(茶殻区)または含まない飼料(対照区)を給与する2試験区を設け,各区に乾乳直前のホルスタイン種乳牛4頭ずつを割り当て,馴致期を7日間,予備期を7日間および本試験期を8日間とする消化試験を実施した.採食量および乾物消化率に両区間で有意差を認めなかったが,粗タンパク質(CP)の消化率は茶殻区で低い傾向を示した.ルーメン内容液のpH,プロトゾア数および総揮発性脂肪酸(VFA)濃度に区間差はなかったが,酪酸のモル比率とアンモニア態窒素濃度は茶殻区で有意に低かった(P<0.05).血漿中のグルコースとコレステロール濃度に区間差はみられなかったが,茶殻区で尿素態窒素濃度が有意に低く(P<0.05),トリグリセリド濃度が高い傾向を示した.乳量(対照区25.1kg ; 茶殻区24.5kg),乳脂率(対照区4.2% ; 茶殻区4.1%)および乳タンパク質率(対照区3.6% ; 茶殻区3.5%)に区間差はなかったが,乳糖率(対照区4.4% ; 茶殻区3.9%)は茶殻区で有意に低かった(P<0.05).以上の結果から,緑茶飲料製造残渣サイレージは,乳量25kg前後の泌乳牛に対し飼料乾物中に10%程度の給与ならば,ルーメン発酵,血液性状,乳量および乳成分に大きな影響を与えずに利用できる可能性が示唆された.