抄録
中国における学校牛乳制度は1999年に開始されたが,本稿ではこの制度の目的,意義および現在までの発展過程を明らかにするとともに,将来発展のための課題について検討した.この制度の目的は,国民,とくに小中学生の栄養と健康状態の改善,酪農・乳業の発達を通じた農業構造改善や雇用拡大,そしてそれらによる農家所得の向上などである.学校牛乳制度実施以来3年間で,学校牛乳の飲用児童生徒数は40万人から5倍の200万人にまで増加し,4,468校の小中学校で,年間210日間学校牛乳が供給されるまでになっている.この制度は児童生徒の栄養状況や,農家の所得状況を一定程度改善したが,今後さらに発展するためには,牛乳の品質向上,農村部への普及のための財政支援政策などの問題を抱えている.