2014 年 85 巻 4 号 p. 461-470
2011年3月11日に起った地震と津波がもたらした東京電力福島第1原子力発電所の大事故によって,大量の放射性セシウムが大気中に飛び散り,東日本のさまざまな地域の土壌や作物の上に降り注いだ.本稿では,放射性セシウムの土壌,牧草(作物),ウシ,牛肉への移行についてシステム論的視点から検討を加えた.とくに,これまでわが国で開発されてきた牧草への放射性セシウムの移行モデル,牛肉へのセシウムの蓄積および排泄モデルおよび家畜体内における放射性セシウムの分布と代謝に関するコンパートメントモデルについて解説した.