本研究の目的は,黒毛和種直接検定記録を用いて予測窒素排泄量,予測リン排泄量および予測メタン関連形質(環境負荷関連形質)の育種価および遺伝的パラメータを推定し,これら環境負荷関連形質と既存の4種の余剰飼料摂取量(RFI)との関係を調べることであった.環境負荷関連形質の予測には,検定開始時および終了時の体重,平均日増体量,可消化養分総量(TDN),粗タンパク質(CP),濃厚飼料と粗飼料の摂取量を用いた.環境負荷関連形質の遺伝率は中程度(0.40~0.59)であり,予測窒素排泄量および予測リン排泄量と予測メタン排出量との間には中~高程度の正の望ましい推定育種価間の相関があった.また,メタン関連形質とTDNに基づくRFI, および予測窒素排泄量とCPに基づくRFIの間にも,正の望ましい推定育種価間の相関があった.以上の結果からRFIによる選抜によって環境負荷の低減が期待できることが示唆された.