抄録
健康なるアンゴラ兎に對し故意に飼料を制限し榮養状態を惡化せしめ,或る程度體重を減少せしめて,其の後再び飼料を増して體重を回復せしめ,斯る一時的な體重の減少が毛量毛質に及ぼす影響に付檢討した。而して體重減少の程度を1ヶ月間に40%減にした場合と15%減にした場合との2回に亘つて試驗した。其の結果の主なるものは次の如くである。
第11表 強度の比較(單位gm)測定數50本
第12表 伸度の比較測定數50本
(1) 1ヶ月間に40%も體重を減少せしめれば其の後體重を回復させても,剪毛量は約半減する。之に反し15%程度の體重減少ならば其の後體重を回復させれば毛量への影響は左程著しくない。
(2) 緬毛,粗緬毛,粗毛の割合に於ては,一時的に體重を40%減少せしめ樣が,15%減少せしめ樣が其の影響は表はれて來ない。
(3) 體重を40%減少せしめた影響は毛長にも判然と現はれ,毛の成長は可なり抑制せられる,15%減少せしめても毛長は稍短くなる。
(4) 體重の減少は毛長に於て土述の如く影響する以上,當然crimps數にも影響し,一般に體重を減少せしめたものはcrimps數が少い。
(5) 鱗片の形状には體重減少の影響は現はれないが,鱗片數は體重を減少せしめたものに於て稍多い。
(6) 毛の太さへの影響は,體重を40%減少せしめた場合は可なり著しく現はれ,15%減少せしめた場合は其の影響は僅少である。
(7) 體重の減少は毛髓の太さ及發達度(毛髓の太さの其の毛の長徑に對する百分比)に影響し,其の數値を小ならしめ,又毛髓の形にも影響を及ぼす。
(8) 一般に體重を減少せしめると被毛の強伸度は其の絶對値に於て小となる,而して此の影響は伸度よりも強度に於て著明の如くである。