この研究では,脂質が多い型の副腎をもつイヌを材料とし,これを飢餓や外傷によるストレスの状熊においた場合,および飢餓においてCortisone acetateを投与した場合の腎について,皮質の脂質の組織学的検索を行ない,Sudan染色,Nile blue sulfate染色,SCHULTZ反応,SMITH-DIETRICH反応,CIACCIO法などの結果を観察した.
副腎の氷結切片でSudan染色される脂質滴は,ストレス例では束状帯以下で減少していたが,Cortisone補給例では,その減少が妨げられた,そして,SCHULTZ反応およびSMITHDIETRICH反応に陽性となる脂質や,Nile blueに赤染する脂質の消長は,大体sudanophiliaと平行していた.
しかし一方,CIACCIO法によつて観察された脂質滴の変化は,氷結切片を染色した結果とは全く違う.CIACCIO陽性の脂質滴は,正常な副腎では球状帯にのみ見られたが,ストレスの場合には,球状帯内で増数拡大し,Cortisone補給例では,束状帯に出現した.
このようなCIACCIO陽性の脂質滴は,必ずしも,形状が一定ではないが,輪状となる傾向があり,組織学的染色では,Nile blueに赤染し,SMITH-DIETRICH反応に陽性とり,SCHULTZ反応には陰性となる.以上あげたCIACCIO陽性の脂質滴は,かつてハムスターなどの脂質が少ない型の副腎で報告された脂質滴と特色が同じであるから,両者は全く同じ脂質と考えられる.