日本畜産学会報
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チーズのLeuconostoc属細菌に関する研究
第II報 ゴウダチーズにおけるLeuconostoc属細菌の消長について
浜本 典男金内 稔郎三野 和雄
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1965 年 36 巻 8 号 p. 334-339

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抄録

Leuc. citrovorumを菌叢中に含むスターターを使用し,製造したゴウダチーズの製造工程および熱成過程におけるLeuconostoc菌数と,その菌叢の変化について検討した.
生乳に存在するLeuconostoc属細菌は,Leuc. mesent-eroides又はLeuc. dextranicumであり,これらは通常のチーズ製造における殺菌処理によりほとんど死滅したが,一部は残存する.スターター添加と同時に,Leuc.citrovorumがLeuconostoc菌叢の大部分を占め,圧搾後のカードで10 5/g程度の菌数を示すが,その後急速に減少した.熟成工程では,原料乳由来と考えられるLe-uconostoc属細菌が,殺菌処理以後の段階でチーズに混入したと思われる少数のものと共に発育し,2.0~2.5カ月熟成チーズで10 5/g程度の菌数に達したのち,漸減して死滅した.
又Leuconostoc属細菌の諸性状から,ゴウダチーズの製造工程,熟成過程で認められた該菌属の消長について検討した結果,Leuc. mesenteroidesおよびLeuc.dextranicumの大部分は,チーズの環境条件で十分発育すると考えられるのに対し,スターターに存在する.育しないか,あるいは著しく発育阻止作用をうけるものLeuc. citrovorumは,チーズの環境条件では,全く発と考えられる.Leuc. citrovorumが製造工程後期から熟成初期までの間に,急速に死滅する原因については不明であるが,恐らく低pHが主原因で,これに食塩の作用,糖欠乏の効果が加わることによると推測される.

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