日本畜産学会報
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皮の化学的処理の改良に関する基礎的研究
II. 塩蔵と石灰漬との生化学的関係について
佐藤 泰岩瀬 保夫
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1966 年 37 巻 12 号 p. 465-470

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抄録

皮の塩蔵処理と石灰漬処理との間にある生化学的関係を,特に炭水化物関連物質について究明するのを目的とする.そのため新鮮皮と塩蔵皮とを種々の期間石灰漬処理をして,炭水化物含量に対する塩蔵の影響と,塩蔵および石灰漬処理期間の影響を測定し,皮に残留する炭水化物の存在状態をトリプシン処理の結果から推定した.
すなわち家兎の新鮮皮と,それを4.5ヶ月間塩蔵した皮とについて,これらをそれぞれ10%食塩水で洗い,さらに石灰漬をそれぞれ1日間,3日間,6日間,12日間,25日間おこない,中和および水洗によつて石灰を除き,乾燥し粉砕して石灰漬期間の異なる試料を調製した.これらの試料について,ヘキソース,ヘギソサミン,オキシプロリン含量を測定し,またpH8.1および37°Cの溶液中で各試料をトリプシンで消化して,1時間,2時間,3時間,6時間の各消化時間毎に溶液の酸加水分解液につき,ヘキソース,ヘキソサミン,オキシプロリンを定量した.
10%食塩水で洗滌したとき皮に残る炭水化物量は,塩蔵することによつて減少する.新鮮皮では25日間の石灰漬によつてヘキソサミン0.03%,ヘキソース0.9%となるが,4.5ヶ月塩蔵した皮では25日間の石灰漬によつてヘキソサミンはほとんどなくなり,ヘキソースは0.6%保持されている.石灰漬した皮からトリプシンによつて遊離されるヘキソース含有物質の量は,新鮮皮の場合,6日間の石灰潰によつて最低となるが,塩蔵皮の場合,3日間の石灰漬によつて最低となる.
また新鮮皮の場合6日間以上石灰漬をするとき,塩蔵皮の場合3日間以上石灰漬をするとき,トリプシンによつて皮から遊離されるヘキソース含有物質量は,遊離されるオキシプロリン含有物質量の増加に対応して,次第に増加する.
すなわち新鮮皮においては石灰漬で溶出する炭水化物は,塩蔵によつて10%食塩水に溶解するようになるが,ヘキソースの一部はコラーゲンと結合して存在すると推定される.

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