日本畜産学会報
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キネジオロジイの立場からみた犬の姿勢維持と歩行運動
第1報 正常駐立姿勢,前より姿勢および後より姿勢の維持に働く抗重力筋
野村 晋一沢崎 坦茨木 弟介
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1966 年 37 巻 5 号 p. 177-184

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抄録
正常の動物で,筋の一つが単独で活動することは,一般に起らない.一挙手一投足すべてが多くの筋の協同的活動の結果による.ここでは,犬の駐立姿勢維持における筋の協同的活動を筋電図によつて調べ,その機構学的意味を考按した.
1. 犬は重心が低く,体重支持面が広いので,安定な姿勢保持ができるが,姿勢維持に働く筋の数は予想以上に多い.四肢において,屈曲位に固定される関節が多い故である.
2. 相反する前より及び後より姿勢でも,起立の基本になる同じ主働筋が常に活動する.たとえば,頸背側筋による頭頸部の斜位固定,M. trapezius, M. rhomboi-deus,M. serratusによる肩帯上部の固定,M. supras-pinatusとM. dettoideusによる肩関節の中間位固定,M. triceps brachiiによる肘関節の伸展位固定,前腕屈筋群の腕関節の過度伸展位固定,趾屈筋群による指関の空間支持,(M. iliopsoas)M. gluteusによる股関節の両側固定,M. quadriceps femorisM. gastrocue-miusの収縮による膝関節の中間位,飛節の伸展位固定などがそれである.
3. 前より姿勢と後より姿勢は筋の働き方からみて,反対の姿勢であるとはいえない.重心を頭または尾側に移動した,正常駐立姿勢の修飾型である.このために頭部と頸部の位置づけは逆であるが,働いている筋はほぼ同じで,活動の強さの差が少数の筋に起つているにすぎない.たとえば,前者では前肢趾端筋に体重支持のために強い活動が起り,後者ではこれが著しく活動を弱くし,伸筋群の活動が加わる,肩関節と股関節の平均取りが,この2種類の姿勢の維持に重要な働きを演じているようである.
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